ドラッグデリバリーシステム
ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)とは、副作用を最小限に抑えることを目的とした薬物輸送技術です。体内での薬物分布を制御することで、薬物の効果を最大限に高めてくれます。
化粧品分野では有効成分を肌に浸透させる技術として活用されています。その一例として、QuSome®やリポソームなどのナノカプセルの化粧品があります。
特にQuSome®はドラッグデリバリーシステムの中の、浸透テクノロジーといわれる技術の一つです。
ドラッグデリバリーシステムのメリット
薬剤は目的の場所に効率良く届くことで、的確な効果を得ることができます。
また効率よく届き的確な効果を得るということは、必要以上に投薬を行う必要もなくなるため、量の減少も期待できます。
さらに必要な場所でのみ薬剤の成分が働きかけることで、一層副作用を抑えることができるのです。
ドラッグデリバリーシステムはこの両方のメリットを満たすための技術です。
ドラッグデリバリーシステムの3つの特徴
1. 標的化
目的部位への輸送をコントロールする技術によって、患部へ集中的に薬剤を届けます。
2. 放出制御
薬剤を届ける時間をコントロールする技術によって、薬剤の溶け出す時間や徐々に薬剤を放出させるなどの制御を行います。
3. 吸収促進
体内での代謝や貪食による薬効の消失を回避し、バリア機能を突破する技術などで吸収を促進させます。化粧品分野では主にこの技術を活用しています。(「浸透テクノロジー(QuSome®)」は、吸収促進技術が該当します)
QuSome®は適用後3時間で僅かに浸透が確認でき、6時間で浸透している様子が確認できます。
コントロールは、6時間ではわずかな浸透しか見られませんでした。
浸透テクノロジーとは
浸透テクノロジーは、ドラッグデリバリーシステムの特徴の一つである吸収促進にあたる技術で、主に皮膚中へ薬剤(有効成分)を浸透させるテクノロジーです。
皮膚は外部からアレルゲンや細菌などの異物の侵入を防ぎ、皮膚中の水分を外へ逃さないバリア機能としての役割があります。そのため外部から皮膚中へ薬剤を送達させる事は困難・課題でした。
その課題を克服すべく開発された1つの技術が、QuSome®を用いた浸透テクノロジーなのです。
ナノカプセルの考えられる浸透ルート
※QuSome®研究では1.と2.の考えを基に研究を進めています。
・QuSome®の粒子径は100nm前後でサイズの特性を利用
・Charged QuSome®のように電荷の利用
・膜を改良する事で、QuSome®膜に柔軟性を持たせる
QuSome®とは
QuSome®とは、b.glenが独自に開発した非イオン性界面活性剤であるPEG脂質で形成されたリポソーム類似ナノカプセル(ニオソーム)の事です。
QuSome®は、皮脂と馴染む親油基と水と馴染む親水基から成るナノカプセルという特性を持ち、細胞間脂質への侵入(浸透)を可能とします。そのため皮膚のバリア機能を通過して、薬剤を皮膚中へ浸透させる事ができるのです。
ここまで高度な技術であるQuSome®ですが、現在でも研究がまだまだ進められており、表面を修飾させる、QuSome®の多重膜の物性を変えるなど、様々な実験が行われています。
これは、薬剤を皮膚へ徐々に放出させたり、留めて貯めさせる、あるいは浸透させる深さを制御するなど、さらなる技術の発展が期待できるためです。