ハイドロキノンの基礎研究
ハイドロキノンは、還元作用・漂白作用がある強力な美白成分で、チロシナーゼ阻害作用やメラノサイトを減少させる効果、メラニンを還元する力でシミを薄くする効果などにより美白効果を発揮します。
またハイドロキノンは優れた美白剤である反面、熱や光などによって容易に酸化反応を起こし、細胞への傷害性が強いベンゾキノンという物質へ酸化されてしまい、皮膚刺激やトラブルを起こしてしまう一面があります。
そのためハイドロキノンを酸化させないための研究や、肌トラブルを起こさせずに安全にハイドロキノンが美白効果を発揮するための研究が欠かせません。
ハイドロキノン物性研究(酸化及び変色防止)
ハイドロキノンは白色の結晶で、酸化型であるベンゾキノンは黄色の結晶で刺激臭があります。ハイドロキノンは構造の特性上、容易に酸化されやすいのです。
ハイドロキノンとベンゾキノンは、共存すると錯体を形成し、暗緑色のキンヒドロンとなります。
そのためハイドロキノンの溶液は無色透明ではありますが、酸化してベンゾキノンが生成されると溶液はまず淡黄色〜褐色になり、次第に錯体を形成し暗褐色~黒色へと変化してしまいます。
冒頭でも述べましたが、ベンゾキノンはハイドロキノンより細胞への傷害性が強く、皮膚刺激や肌トラブルを誘発しやすくなります。
ハイドロキノンを酸化させない研究や変色を防ぐ研究は、ハイドロキノン含有製剤の品質を守るためにも常に欠かせない研究なのです。
写真:ハイドロキノンの安定性を溶液の色で観察・検討した(観察条件:室温)。
No.1 : ハイドロキノン+抗酸化剤-1併用 (pH=3.0)
No.2 : ハイドロキノン+抗酸化剤-2併用 (pH=4.0)
No.3 : ハイドロキノンのみ (pH=4.0)
No.4 : ハイドロキノン+pH調整(pH=3.0)
pH=3で、抗酸化剤-1を使用する事で、室温条件でハイドロキノンの酸化(変色)は防げる。
ハイドロキノン含有製剤の安全性評価の構築
ハイドロキノンは優れた美白剤ですが、副作用として皮膚刺激や皮膚トラブルを引き起こすリスクも秘めていることはご理解いただけたかと思います。
酸化型のベンゾキノンでは、さらに皮膚刺激や皮膚トラブルを引き起こすリスクが高まることも前述のとおりです。
しかし、ハイドロキノン含有製剤での安全性を評価する試験方法がまだ確立されていないので、b.glen 中央研究所では独自に評価系構築の検討及び研究を、3次元皮膚モデルを用いて行いました。
そして製剤に、ハイドロキノンと共に抗炎症や抗酸化作用のある有効成分を処方し、傷害性を軽減できないかを現在研究しています。
図:IL-1αにより刺激性作用を評価した結果、グラブリジンで刺激抑制作用が確認された。
ハイドロキノン を用いた細胞試験
美白効果の高いハイドロキノンを含んだ化粧品を開発するために、ハイドロキノンが細胞傷害を与えるメカニズムを研究し、細胞傷害の軽減を目的とした研究は常に進められています。
例えば、実験用の細胞にハイドロキノン単独の濃度を高くした場合と、抗酸化剤を併用した場合の、細胞が受けるダメージを比較し、どのようにハイドロキノンの濃度を上げて化粧品に含めれば、安全性を維持したまま効果を高めることが出来るのかという試験を行い、検証に成功しました。
図1:培地の色が褐色へ変化したため、培養中で一部ベンゾキノンへ酸化されベンゾキノン由来の細胞傷害性が出てていると考えられる。
図2:抗酸化剤を添加し、ハイドロキノンの酸化を防いだ結果細胞傷害性が軽減した。「傷害性が出現する濃度が引き上げられた=高濃度でも傷害性がない」と考えられる。
ですが、抗酸化剤は肌の中に入ると各酸化ストレスによって消費されてしまうので、次に肌が本来持つ抗酸化の力を引き出すことで、ハイドロキノンのリスクを下げられないかという仮説の元、試験を行い、仮説を実証しています。
(参考:有用性研究・抗酸化作用)
図3:QuSome 成分であるジステアリン酸PEG-23グリセリル(GDS-23)単独でも傷害性が軽減され、QuSome化する事でさらに傷害性の軽減が確認できた。QuSome化させる事で細胞への取り込みが向上したと考えられる。
ジステアリン酸PEG-23グリセリルを用いる事で細胞の抗酸化システムが増強され、ハイドロキノンの細胞傷害性を軽減できる可能性が示唆された。