油溶性成分の浸透QuSome®の開発
QuSome®とは、b.glenが独自に開発した非イオン性界面活性剤であるPEG脂質で形成された、リポソーム類似ナノカプセル(ニオソーム)です。
QuSome®は、ドラッグデリバリーシステムの『浸透テクノロジー』といわれる技術の一つで、美容成分を肌へ効率よく浸透させることができます。
QuSome®は油と馴染む親油基と水と馴染む親水基から成るナノカプセルという特性を持っており、ビタミンCのような水溶性成分、ビタミンAのような油溶性成分を共に内封できます。
今回、QuSome®の多重膜の組成や物性を変えることで、油溶性成分を効率よく内封できるQuSome®の開発に成功しました。そこで新たな進化型QuSome®の浸透評価を行いました。
QuSome®を用いた油溶性成分の浸透研究
QuSome®は、油と馴染む親油基と水と馴染む親水基から成るナノカプセルです。日々の研究でQuSome®の製法や組成を工夫することによって、油溶性成分を効率よくQuSome®へ内封させられることが明らかになりました。そこで、一般的なリン脂質を用いたリポソームとの浸透比較や進化したQuSome®の浸透評価を行いました。
QuSome®と一般的なリポソームの浸透比較試験 (クリックタップで詳細を表示)
三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)を用いて、浸透比較を行いました。
評価サンプル
Control : ナイルレッド(油溶性の蛍光成分)含有エマルション溶液
リポソーム : ナイルレッド含有リポソーム溶液
QuSome® : ナイルレッド含有の従来型QuSome®溶液
Sq-Chol/QuSome® : ナイルレッド含有の改良型QuSome®溶液
方法
三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)の角層側からナイルレッド含有試料を150mg適用し、37℃にて所定の時間インキュベーションしました。
・三次元組織ヒト表皮モデルへの表皮モデルへの浸透量(皮膚中量)、および表皮モデルを透過した透過量の評価方法
所定の時間後に評価試料を除去し、表皮モデル中のナイルレッドを抽出して、ナイルレッド蛍光強度 (Ex/Em=553/637 nm) をマイクロプレートリーダーにて測定し、皮膚中のナイルレッドを算出しました。
・切片作成による浸透量の可視評価方法
所定の時間後に評価試料を除去して、表皮モデルで凍結切片を作成しました。そして、各評価試料の皮膚切片を4μm の厚さで作製し、顕微鏡で観察しました。
結果
図1. リポソームとQuSome®溶液の浸透比較試験 ※コントロールを1とした際に何倍という見方のグラフ
リポソーム、 QuSome®共にコントロールと比較すると高い浸透力を示しました。
さらに従来型QuSome®を改良することで、浸透力の向上が確認できました。
Controlでは、蛍光はほぼ確認できませんでした。リポソームとQuSome®では、蛍光が僅かに確認できました。
従来型QuSome®を改良したSq-Cho/ QuSome®では、強い蛍光が確認できました。
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油溶性成分浸透型QuSome®の開発研究-1 (化粧水処方用) (クリックタップで詳細を表示)
QuSome®の製法や組成を工夫することによって、油溶性成分を効率よくQuSome®へ内封させられることから、さらにQuSome®の補助剤としてコレステロール、およびコレステロール誘導体を数種類検討して浸透評価を行いました。(三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)を使用)
評価サンプル
QuSome® : 従来型QuSome®
改良型-Ⅰ:コレステロール使用QuSome®
改良型-Ⅱ:ステアリン酸コレステリル使用QuSome®
改良型-Ⅲ:コレステロールとステアリン酸コレステリル併用型QuSome®
改良型-Ⅳ:コレステロールとオレイン酸コレステリル併用型QuSome®
改良型-Ⅴ:コレステロール・ステアリン酸コレステリル・オレイン酸コレステリル併用型QuSome®
方法
三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)の角層側からナイルレッド含有試料を150mg適用し、37℃にて6時間インキュベーションしました。
6時間後に評価試料を除去し、表皮モデル中のナイルレッドを抽出して、ナイルレッド蛍光強度 (Ex/Em=553/637 nm) をマイクロプレートリーダーにて測定し、皮膚中のナイルレッドを算出しました。
結果
図1.各改良型QuSome®溶液の浸透比較
従来型QuSome®よりも、コレステロールおよびコレステロール誘導体を組み込んだQuSome®の方が 油溶性成分の浸透が向上することが確認できました。特にコレステロール誘導体でなく、コレステロールを添加することで浸透が向上する傾向が確認できました。
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油溶性成分浸透型QuSome®の開発研究-2 (クリーム等の乳化処方用) (クリックタップで詳細を表示)
QuSome®の補助剤として高級アルコールを用いたQuSome®は、クリーム等の乳化処方中でも油溶性成分を効率よく内封することができます。今回は、QuSome®の材料としてジミリスチン酸PEG-12グリセリル(GDM-12)、ジオレイン酸PEG-12グリセリル(GDO-12)、ジステアリン酸PEG-23グリセリル(GDS-23)と、補助剤としてステアリルアルコールおよびオレイルアルコールにて検討を行いました。(三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)を使用)
図1, 2 は油溶性(油にしか溶けない)のナイルレッド(赤色染色剤)をQusomeに内包して観察を行なった画像です。
図1. が明視野画像で単純に拡大した画像、図2. が偏光画像で多重膜になっていると光って見えます。
図1, 2 から赤色のナイルレッドが中心部に存在し(図1)、その周りを多重のQusome膜で覆っている(図2)のが確認できます。
従って、油溶性成分を内封しているQusomeが確認できたという事になります。
評価サンプル
Control : ベースとなるクリームにナイルレッドを溶解させたサンプル
改良型-Ⅰ:GDM-12 + ステアリスアルコールから成るQuSome®
改良型-Ⅱ:GDO-12 + ステアリスアルコールから成るQuSome®
改良型-Ⅲ:GDM-12 : GDO-12(1 : 1)+ ステアリスアルコールから成るQuSome®
改良型-Ⅳ:GDS-23 + オレイルアルコールから成るQuSome®
改良型-Ⅴ:GDS-23 + ステアリルアルコールから成るQuSome®
方法
三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)の角層側からナイルレッド含有試料を150mg適用し、37℃にて6時間インキュベーションしました。
6時間後に評価試料を除去し、表皮モデル中のナイルレッドを抽出して、ナイルレッド蛍光強度 (Ex/Em=553/637 nm)をマイクロプレートリーダーにて測定し、皮膚中のナイルレッドを算出しました。
結果
GDM-12およびGDO-12と高級アルコールを用いたQuSome®では、浸透が阻害されるということが確認できました。特に、GDM-12とステアリルアルコールの組み合わせでは浸透がControlと比較して半減しています。
このことからGDM-12とステアリルアルコールについては、サンケア製剤の紫外線吸収剤などの浸透させたくない成分に都合が良い“皮膚上に留める(浸透しない)QuSome”としての応用が期待できます。
図4.各改良型QuSome®溶液の浸透比較
また一方で、GDS-23を用いたQuSome®では浸透が向上しました。
今回の検討で、“肌へ浸透させたい成分”と“浸透させないで肌表面に留めておきたい成分”をQuSome®タイプ
によって使い分けられる可能性が見えてきました。
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